エノク語 Enochian

 かつてアトランティスで話されたという言語に、後世になってオカルティストたちが付けた呼称で、それに変形を加えたものを魔術師ジョン・ディーが天使と交信するための言葉として使用したことで有名になる。エノク書との直接の関連はないようである。この聖書のエノクの名が選ばれたことは、オカルティストたちがオカルト隠しのために使用したのだろうとフレッド・ゲティングスは推測する。
 ジョン・ディーは、十六世紀のイギリスの錬金術師、数学者、天文学者、占星術師であり、生涯天使との交流を熱望し続け、エドワード・ケリーという霊媒師と出会い、彼を通じて天使との交流を行ったという。ケリーは霊の呼び出しにエノク語を使い、これは独特の文法と構文を持ち、発音はサンスクリット語、アラビア語、ギリシア語に似ていたという。彼らはエノク語の鍵と呼ばれる十九の召喚方法を使って天使を呼び出し、初めの二つが元素の精霊を、次の十六が四大精霊(これはさらに四つに細分化される)、十九番目に三十人のアエテル、エアーの誰かを呼びだした。
 十九世紀には、エノク語は忘れ去られるが、アレイスター・クロウリーはエノク語の鍵を研究し、これが本物であると述べている。
 十五世紀にアグリッパにより秘密文字に関連したアルファベットが集められ、その中にはScriptura coelestis(「天国の文字」)やScriptura Malachim(「エノク語」)も含まれる。




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フレッド・ゲティングス 悪魔の辞典 大瀧啓裕訳 東京・青土社 1992.
フレッド・ゲティングス オカルトの辞典 松田幸雄訳 東京・青土社 1993.
ローズマリ・エレン・グィリー 図説天使と精霊の事典 大出健訳 東京・原書房 1998.